東京新聞130周年

東京新聞は、明治17(1884)年に「今日新聞」として発刊。9月25日に発刊130周年を迎えこれからも、
東京の地元紙として地域密着や読者の視点を大切に、家族みんなで楽しめる明るい話題をお届けします。
前後4日間、130周年企画として「つたえる愛情。つながる家族」をテーマとした特集を掲載します。

つたえる愛情。つながる家族

子どもの頃から小松菜が大好物!

 子どもの頃は体が弱くて、学校をよく休んでいたんです。それもあってか、母の料理はぜんぶ手作り。家族で外食した記憶がないんです。そこは母のこだわりで、「食事で家族を元気にしたい」と思ってくれていたんでしょうね。

 私も子どもの頃から料理が大好き。母と台所に立って、野菜を洗ったり、魚をおろしたり。おみそ汁づくりに熱中したこともありました。「おいしいね」と家族に喜んでもらえることが嬉しくていろいろ作っていましたね。

 大好物は、昔から小松菜です(笑)。食卓に小松菜と油揚げの煮びたしが出ると大喜びで一束ぺろりと食べてしまう。母に「二束は食べないでよ〜」とよく言われていました。

 野菜は好きでしたが、食の仕事を選ぶきっかけは、「豚」だったんです(笑)。子どもの頃から動物、とくに豚が大好きで、高校生の時も「豚を飼って暮らしたい」と本気で思っていましたから。そんなある日、フランスでトリュフを掘る豚のことを知って「これだ!」と。豚、トリュフ、フランス料理…とつながって、料理人への夢をふくらませていきました。

 大学時代は、料理研究家のもとで学び、飲食店のアルバイトをかけ持ちし、その道まっしぐら。フランスの料理学校へ留学もしましたが、その時に「何か違うな」と。まず動物の肉をさばくことに慣れなかったし、見た目やおいしさだけでなく「食べて健康になる料理」を作りたいという思いもありました。そんな時に出会ったのが、マクロビオティックやベジタリアンの食事法。これを自ら実践したら、驚くほど元気になりましたね。

「食」は「命」をつなげて「家族」をつなげる

 26歳の時、主人の実家がある栃木でベジタリアンのお店を開いたことも転機になりました。近くの畑に行った時、温かく、いいにおいがする野菜に「命」を感じたんです。「野菜の本当の魅力を、畑を知らない都会の若い女性にも伝えたい」。わき上がってきたこの思いが「野菜スイーツ」へとつながっていきました。 

 主人は、私がパティシエを務める「パティスリー ポタジエ」の経営者です。学生時代から起業する夢を持っていて、私が夢やアイデアを語っているうちに「お店を始めちゃおうか」と。そして、主人も私も一軒のお店を切り盛りするだけでなく、野菜の魅力を伝えたり、健康な食事を提案するなど社会性のあることをやっていきたかったんです。その思いは合致していましたね。

 主人はどんな人?…そうですね…。一言で言うなら「〝じゃがいも〟のような人」でしょうか(笑)。主食にもなるし、焼いても揚げても蒸してもおいしい。私にとって「なくてはならない存在」です。わが家はベジタリアン生活を送っていますが、主人も野菜が好きになったし、「スレンダーな体型をキープできて嬉しい」と言ってくれています(笑)。

 「食」とは、命をつなげて、家族をつなげていくものです。「母の手作り料理を食べてきたから、元気でいられる」。私自身、この気持ちが根底にあるから、今の仕事を続けていられるのだと思っています。母が教えてくれた「食の大切さ」。今度は、私から多くの人に発信していきたいと思います。

「パティスリー ポタジエ」オーナーパティシエ
柿沢安耶(かきさわ あや)さん

1977年東京都生まれ。06年には野菜スイーツ専門店「パティスリー ポタジエ」を開店。農業支援活動を軸に食育活動や講演会なども行っている。

「パティスリー ポタジエ」 東京都目黒区上目黒2-44-9 tel.03-6279-7753
営業時間 10:00〜20:00(L.O.19:30) 年中無休

左/家族そろっての食卓で。左からお父様、柿沢さん、お兄様、お母様  右/小さい頃から食べることが大好きだった柿沢さん

上/体にやさしい野菜スイーツが味わえる「パティスリー ポタジエ」 下/左「キャロットチョコフラン」奥「とうもろこしのミルフィーユ」 手前「グリーンショートトマト」右「アボカドレアチーズ」

明治17(1884)年創業 うなぎ屋「亀とみ」6代目
下田豊(しもだ ゆたか)さん

「亀とみ」 東京都中央区日本橋室町4-1-13 tel.03-3241-6505
営業時間 11:00~14:00
17:00~21:00(L.O.20:30) 土日祝休

上/左から次男・充彦(みつひこ)さん、豊(ゆたか)さん、奥様・靖子(せいこ)さん、長女・暁子(あきこ)さん
下/「亀とみ」のうな重。ふっくらうなぎに辛めのタレが絶品

親から子へ心と技を伝える

 22歳で店を継いで、今年で64歳。もう42年も経ったんだね。高校卒業後3年間修行に出て、この店に入りました。高校生のときに親父は亡くなったので、直接うなぎのことを教えてもらうことはできなかったですね。

 うなぎのタレは、戦後、お店の再開時より受け継いでいます。火事や地震に遭ったらまずタレを持って逃げろと言われているくらい、タレはうなぎ屋の命だからね。

 親父亡き後、お袋は大変だったと思いますよ。お袋は、控えめだけどしっかり者。接客をやっていたので「店の顔」でしたね。私が結婚してからも、お袋は妻と一緒に接客をやっていました。妻は、お袋の姿を見ていろいろ教えてもらったんじゃないかな。

 子どもは4人です。最近、みんなよく手伝ってくれるようになりましたね。跡継ぎ…?今は長男と次男に少しずつ教えています。跡を継いでくれるのは嬉しいけど、うなぎ屋の厳しさを知っているから複雑な思いもあったりね(笑)。

味も接客も「基礎」が大切

 今の世の中、接客がますます大事になっているから、味がよくても店の人がつっけんどんではお客さんが逃げてしまう。店の雰囲気がよければ、また来てくれる。「心を込めて」という思いは、長女が妻から受け継いでいるところですよ。ありがたいことですよね。

 日本橋はにぎやかになって、若いお客さんも来てくれるようになりました。まあ、時代に合わせて新しいものを取り入れるのもいいけれど、それには味も接客も「基礎」がしっかりしていないとね。そこを大切に次の世代に引き継ぐのが一番いいんじゃないかと思っています。こういう考え、古いって言われるかもしれないけど。新しく取り入れるものは息子たちに任せて、私は、彼らがうなぎを仕上げていく様子を見て「そこちがうよ」なんて言うくらいでいいんじゃないかな(笑)。

下田さんのご両親。左からお母様のトメさん、
お父様の5代目・敬一(けいいち)さん

母の心を受け継いで「お客さんのために」

 現在、お店は、私と夫、娘たちと一家で切り盛りしています。3代目の母の跡を継いで約50年。おかげさまで家族は健康で、みんな元気です。そばは栄養の宝の山といわれ、毎日そばを食べ、一生懸命働いてきたので、ご先祖様は私たち家族を守っていてくださるようです。

 翁庵名物といえば、「かつそば」ね。そばの上に「とんかつ」がのっている、50年以上続いているメニュー。昔からこの近くには大学生が多く、そばだけでは物足りない学生さんのために作ったメニューでした。

 明治・大正の先代からは商売の厳しさ、喜び、楽しみを経験させていただきました。今でも昔の味を守りながら、その心を私たちも受け継ぎたいと生卵やお稲荷さんをサービスしたり、創業日の5月5日にちなみ、「5」がつく日には「かつそば」を限定100食、880円のところを500円で出しています。「5」の日には、「かつそば」を食べている人で満席です(笑)。

商売繁盛こそ元気の素

 家族それぞれ性格も違えば考え方だって違う。いつも心ひとつというのはむずかしいことです。

 だけど、うちの家族は「商売を大切にする心」が基本だと思うので、みんながひとつになっていくことができるように頑張っています。そこさえつながっていれば、何とかやっていけるでしょうか。商売繁盛していれば、みんなが仲良くなるし、毎日が楽しくなりますよね。

 130年続けてこられたことは、先代と今まで支えてくれた従業員の方々、そしてお客様に守られてきたおかげと日々感謝しております。

〜次女・久子さんのお話より〜  お店には大学の卒業生が数十年ぶりに食べに来てくださることがよくあります。今は若いお客さんが少ないんですよね…(笑)。学生さんでそば湯を飲んだことがないという方もいますし。客層はずいぶん変わり、外国人観光客も多くなりました。神楽坂の街は変わりましたが、私たちは老舗の味を守りながら、これからも頑張っていきたいと思います。

明治17(1884)年創業 そば屋「翁庵」4代目
会田きみ子さん・76歳

「翁庵」 東京都新宿区神楽坂1-10 tel.03-3260-2715
営業時間 月~金 11:00~22:00(L.O 21:30)
土・祝日 11:00~18:00(L.O 17:30) 日曜休

上/翁庵名物「かつそば」。かつとそば汁の相性抜群!
下/常連客も愛するそば焼酎のそば湯割り

左から三女・友子(ともこ)さん、夫・茂行(しげゆき)さん、
次女・久子(ひさこ)さん、きみ子さん

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